空也上人立像、半世紀ぶりに東京へ。特別展「空也上人と六波羅蜜寺」東京国立博物館

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2022.02.28

こんにちは。2022年3月1日〜5月8日、東京国立博物館 本館特別5室 にて特別展「空也上人と六波羅蜜寺」が開催されます。その報道内覧会に行ってまいりました。

昨年11月に開催された報道発表会以来、とても楽しみにしていた本展。今年2022年は、空也上人没後1050年に当たります。(記事「空也上人像、半世紀ぶりに東京へ。特別展「空也上人と六波羅蜜寺」東京国立博物館にて開催」)

高校時代、日本史の教科書を見てクギ付けになり、新幹線に飛び乗り空也上人立像に会いに六波羅蜜寺に行ったのよねー35年ぶり!1973年の小田急百貨店での展示を最後に六波羅蜜寺をお出になっていない空也上人。お会いしたかった!

六波羅蜜寺では正面からの拝観ですが、本展覧会では後ろ姿も拝観することができます。水晶の目から深く優しいものが伝わってきます。

(手前)重要文化財 空也上人立像 康勝作 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵 

平安時代、厄災に見舞われた京都市中を、上人自ら刻んだ十一面観音立像を車に安置して市中を回り、仏前に献じた茶を病者に授け、歓喜踊躍しつつ念仏をとなえ、疫病を鎮めたといいます。

重要文化財 空也上人立像 康勝作 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵 

「南無阿弥陀仏」ととなえると、その一音一音が阿弥陀仏になったという伝説を彫刻化した像はあまりにも有名。仏師運慶の四男である康勝の作です。

重要文化財 空也上人立像(部分) 康勝作 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵 

頰がこけた痩身の体つき、硬い裘(かわごろも)、歩いて擦り切れた草鞋の質感がリアル。指はほぼ地面についてしまっています。

重要文化財 空也上人立像(部分) 康勝作 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵 

泣けてくるのが鹿杖。

上人が愛でた鹿を、定盛なる猟師が射殺したと知り、大変悲しみその皮と角を請い受け、皮を裘とし、角を杖頭につけて生涯我が身から離さなかったという。定盛も自らの殺生を悔いて上人の弟子となり、寒い夜もいとわず京中を巡行して衆生の能化につとめたそうです。

重要文化財 空也上人立像 康勝作 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵 

空也上人の生涯を知る上で最も信頼できる史料が「空也誄(くうやるい)」。「誄」とは、亡くなった人を偲び、生前の功績をたたえて、その死を悼んだ文章のこと。「空也誄」は、同時代を生きた源為憲(?〜1011)が資料を収集してまとめ上げました。

空也上人の父母は明らかではなく、郷里のことも自ら口にすることはなかったといいます。得るものがあれば貧しい人や病人に与え、民衆救済に生涯をかけ、「市聖(いちのひじり)」と呼ばれ、多くの人々に慕われた空也上人。

入滅の日には、身体を清め、香炉を両手で持って姿勢を正して座り、西方浄土に向かって目を閉じたそうです。なんて潔く、なんて覚悟ある生き様。

そして平安・鎌倉彫刻の宝庫、六波羅蜜寺の名宝が一堂に会します。空也上人が京都・東山の地に創建した西光寺は後に六波羅蜜寺と改称され、度重なる兵火をのがれた名宝が数多く安置されています。

入場するとすぐに柔和なお顔立ちの地蔵菩薩立像が迎えてくれました。

空也上人は、阿弥陀如来にすがれば極楽に往生することができ、また六道に生まれ変わっても、地蔵菩薩に救ってもらえると説きました。

中央:重要文化財 地蔵菩薩立像 平安時代・11世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

圧巻の存在感!薬師如来坐像を中心に四天王立像。

重要文化財 四天王立像 平安時代・10世紀 (持国天、広目天、多聞天)/ 鎌倉時代・13世紀(増長天)、重要文化財 薬師如来坐像 平安時代・10世紀 いずれも京都・六波羅蜜寺蔵

影まで勇ましく美しい。

重要文化財 四天王立像のうち増長天立像 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

六波羅蜜寺は、平安京の東の葬送の地であった鳥辺野の入口にあり、「あの世」と「この世」の境界に位置する寺として人々の信仰を集めてきました。近くには、小野 篁(おのの たかむら)が地獄と行き来したという井戸のある六道珍皇寺があります。夜な夜な「あの世」に通い、閻魔王の補佐をしていたなんて!興味深い人物。

冥界への入口と考えられた六波羅蜜寺の近くには「六道の辻」と呼ばれる一画があります。人は閻魔王に生前の行いを裁かれ、次に生まれ変わる世界、六道(天・人・修羅・畜生・餓鬼・地獄)への転生が決まります。

重要文化財 閻魔王坐像 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

運慶が1180年代に造ったと推定される鎌倉彫刻の代表的作例、地蔵菩薩坐像。X線やCTの調査により像内に数多くの納入品があることが判明しています。

重要文化財 地蔵菩薩坐像 運慶作 鎌倉時代・12世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

そして木造の夜叉神立像。丈の短い甲を装着し獣皮をまとい、裸足で立つ夜叉。夜叉とは、サンスクリットのヤクシャを音写した言葉。インド古代から知られる樹木の精霊で、福神と鬼神の両方の性格をもつ存在だったそうです。

ものごとは常に一対。陰が生まれれば同時に陽が生まれる。それぞれの「役割」で私たちに気付かせてくれます。

夜叉神立像 平安時代・11世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

『捨ててこそ』という空也上人の有名な教え。一切を捨てて念仏しなさい。善悪を判断せず、地獄を恐れず、極楽も願わず念仏をとなえていると、外側のすべてが消え梵我一如(ぼんがいちにょ)の境地に至る。あるがままでいい。今が浄土になる。

外に出たら春めいた空気が気持ちよかった。休館日の美術館って好き。

嬉しいのが、海洋堂の「空也上人立像」六波羅蜜寺公認フィギュア。これは絶対に手元に置きたい!と思い続けてきました。

表情、手足に浮き出た血管等の肉体表現、6体の化仏、鹿杖など細部まで精巧に再現されています。流石、海洋堂の原型製作&造形総指揮。

愛した鹿の角杖を片時も離さず市中を歩いたという、この後ろ姿に惹かれる。

フィギュア「六波羅蜜寺公認 空也上人立像」(税込9,800円)

報道発表会の記事にこんなコメントを下さった方がいました。「この時期に…まさに福音ですね」

そして、六波羅蜜寺の山主、川崎 純性さんのお言葉「沢山の方々に賑々しくご来館いただきたい」

森羅万象に生命を感じ、ただ南無阿弥陀仏をとなえ、今日ある事を喜び、歓喜躍踊しつつ念仏をとなえたという空也上人に会いに、皆で賑々しく上野に行きましょう!

特別展「空也上人と六波羅蜜寺」

会期:2022年3月1日(火)〜5月8日(日)

会場:東京国立博物館 本館特別5室、本館11室

*本展は事前予約(日時指定券)推奨です。詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

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