京都・宮津のお酢屋「飯尾醸造」とレストラン「aceto」/ 海の京都① 11/47

2022.04.20

こんにちは。47都道府県11県目は京都。京都府北部、日本海に突き出た丹後半島へ。ここを目指した理由のひとつが、宮津のお酢屋「飯尾醸造」を訪ねること。

すっぱいものが大好きで。お酢は一升瓶で買います。そしてずっと愛用しているのが「飯尾醸造」の富士酢。

創業は明治26年。128年ずっとお酢を造りつづけ、今の当主・飯尾彰浩さんで5代目になる「飯尾醸造」。このお酢屋の凄いところは、お酢の原料となるお米作りからたずさわっているところ。「いい酢はいい米から」。

昭和39年から地元、京都・宮津の棚田で農薬を使わずにお米を作ってもらい、 その新米だけを原料にお酢を造っています。人里離れた棚田でわざわざお米を作るのは、他の田んぼで使った農薬や生活排水の影響を受けないようにするためです。

本当はお酢蔵の見学がしたかったんだけど…当面見学中止。

なので店舗へ。チリひとつ落ちていない綺麗なお店。

整然と並べられたお酢たち。

美しいパッケージデザイン。

お米と水だけが原料の「純米富士酢」。酢1リットルにつき200g(JAS規格の5倍量)の無農薬米が使われているので、深い旨味とコクが感じられます。

冬になると、杜氏(とうじ:醸造工程を行う職人)が酢もともろみ(酒)を仕込みます。麹づくりからはじまり、酒母づくり、そしてもろみ(酒)の仕込みと、約100日間泊まり込みでの作業になります。 できあがった酢もともろみ(酒)にはアミノ酸がたっぷり。これがこのあとお酢の風味をおいしくする決め手となります。

そして「静置発酵法」で100日以上かけて酒をお酢に発酵させます。職人さんたちによる100日間の泊まり込み作業の後は、酢酸菌による100日の自然発酵(多くのメーカーでは8時間から長くても数日で発酵が終わる速醸だそう)。

人と菌との丁寧な協働作業。

発酵が終わった酢は、熟成蔵に移され、ゆっくりと時間をかけて熟成されます。熟成期間は最低でも240日〜300日ですが、 その間もただ寝かせておくだけではなく、何度もタンクからタンクへの移し替えを行います。 5回以上の移し替えで空気に触れさせてやることによって、出来上がりの酢は、よりまろやかな風味に仕上がるのです。

こだわり抜いたものだけが持つ美麗な佇まい。

化学調味料、アミノ酸、酵母エキスなどは一切不使用。利尻昆布。鹿児島の鰹節から一番出しをとり、すべて天然のものだけで調合。徳島のゆず果汁と、大分かぼす果汁を30%以上も使用した香り豊かな「ゆずぼん酢」。

蒸した野菜にこれをかけるだけで美味。

発酵と熟成を重ねた「紅芋酢」と、丹波産の黒豆から造った「黒豆酢」は飲む。身体がシャキーンとする感じで気持ちいい。

4月13日から登場の夏の限定「すし酢でらっきょう」。ホームページに美味なる「酢料理レシピ」が載っていますので是非。

店舗だと1割引で購入できるのね〜と嬉しくなって、アレもコレも一升瓶も買って富士酢なボックスに入れてもらってご機嫌。

そして夜は「飯尾醸造」が運営するレストラン「aceto」へ。店名はイタリア語で「酢」を意味します。

お酢屋が地元・丹後を活性化したいという想いで2017年7月にオープンしたイタリア料理店。

米作りから酒造り、酢造りまですべての工程を自前で行っているお酢やがプロデュースするレストラン、ものに対する熱量が違います。

真の持続可能性=サステナビリティって、その土地にあるものを循環させ、文化を保存していくこと、だと思う。継承されてきた職人技、受け継がれてきた手仕事、自然の恵みを「そこで」堪能する。

我々がディナー営業のみにしているのには理由があります。
それは宿泊客を増やしたいから。宿泊していただき、滞在時間が延びることによって、街への理解が深まり消費が増えることも期待しています。

はい、ここの夜を堪能したかったので丹後に宿泊しましたよー

120年前に建てられた商家をリノベーションし、酢蔵の古い欅の「搾りフネ」をテーブルにリメイクした店内。

シチリア・シラクーサで修行を積み、東京でシチリア料理の第一人者として活躍してきた重康彦シェフ。すべてのお皿に酢は勿論、酢を作る工程にある米や酒かすが使われています。

奥行きのある料理でした。裏で仕事をしている酢という黒子が薄っすらと透けて見えるような。氏がテーマとしている「凝縮感」が口の中で広がります。

「純米富士酢」の原料になる、無農薬の米を玄米のまま13℃で1年間熟成させたリゾット。宮津漁港で獲れた魚のアラを使い煮詰めたソースと共に。

米糠を乾燥させたものをはたいて揚げた甘鯛と糠漬け野菜。
お寿司屋さんと取り合いになるという10年寝かせた酒かす!を使ったチョコレート、無花果好きにはたまらない無花果のクラフトコーラ煮。美味。

ん?空禅抹茶ってなに? 美味しそう、ソーダで割って下さい。

空禅抹茶は、サントリーに21年勤続した方が「茶葉本来の味を楽しめる高品質な茶葉の需要を創出したかった」という想いで立ち上げたWorld Matcha Inc.のものでした。サンフランシスコ発祥というのも興味深い。

面白い!と騒いでたら色々見せて下さった。

茶室の円窓と茶筒から着想を得たマシンのフォルムが美しい。このマシンで茶葉を碾いて抹茶にして飲みます。

あるようでなかった「自宅で茶葉から楽しめる抹茶」。抹茶は茶葉まるごとを臼で碾き、それら全てを摂取するので農薬や化学肥料を使わない100%オーガニック。

ペットボトルのお茶が普及し始め、急須でお茶を飲まなくなり、一番茶など高級な茶葉の需要が減ってしまいました。ペットボトルのお茶は、三番茶・四番茶などの安価な茶葉を主体に、とても美味しい「お茶風味の清涼飲料」ができてしまいます。近年、ペットボトルのお茶飲料はコモディティー化が進んだ結果、価格競争が激化し、各メーカーはさらに安い茶葉を仕入れようとするため、そのしわ寄せは生産者さんへ行きます。日本各地の生産者さんをまわりながら、それらの問題に直面し、わたしは茶葉本来の味を楽しめる高品質な茶葉の需要を創出したかったのです。CUZEN MATCHA

私たちは特別なことをしているわけではないんです。
そもそも千利休の時代は、オーガニックでつくられた茶葉を使って、飲む直前に石臼で茶葉を碾き、碾きたての抹茶を楽しみ、日々の健康に役立てていました。
CUZEN MATCHA

原点回帰。最近出かける先々でこのワードが浮上する。
料理もマシンも何もかも、美しいって嬉しい。突き詰めたものって美しいのよね。

ものに相対した時に「感じる」ことの大切さ、身体のセンサーの素晴らしさを感じた1日でした。

重シェフがチャーミングに見送って下さいました。ありがとう、美味しかったです!

また宮津に来ますね。

飯尾醸造 Iio Jozo

TEL 0772-25-0015

【住所】〒626-0052 京都府宮津市小田宿野373

【営業時間】平日・土曜日
午前9時~12時 午後1時~5時
※日曜・祝日は休業。土曜日が祝日の場合も休業です。

aceto

TEL 0772-25-1010

【営業時間】18:00~23:00(最終入店 20:30)
【定休日】毎週火曜日・水曜日
【住所】〒626-0016
    京都府宮津市字新浜1968

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