空也上人像、半世紀ぶりに東京へ。特別展「空也上人と六波羅蜜寺」東京国立博物館にて開催

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2021.11.05 

こんにちは Lulu.です。2022年3月1日〜5月8日、東京国立博物館にて特別展「空也上人と六波羅蜜寺」が開催されます。その報道発表会に行ってまいりました。

日本史の教科書を見てクギ付けになり、新幹線に飛び乗り空也上人立像に会いに六波羅蜜寺に行ったのは、高校生の時。30年以上経つのに捨てられない日本史の教科書を引っ張り出してきました。

空也上人没後1050年に当たる2022年。平安時代、厄災に見舞われた京都市中を、上人自ら刻んだ十一面観音像を車に安置して市中を回り、仏前に献じた茶を病者に授け、歓喜踊躍しつつ念仏を唱え、疫病を鎮めたといいます。

当時の世情が今と重なります。1973年の小田急百貨店での展示を最後に六波羅蜜寺をお出になってない空也上人が、半世紀ぶりに東京へ。

六波羅蜜寺の山主、川崎 純性さんのお言葉が残りました。「沢山の方々に賑々しくご来館いただきたい」

本展は、第1章「空也上人と六波羅蜜寺」、第2章「六波羅とゆかりの人々」で構成されます。

「南無阿弥陀仏」と唱えると、その一音一音が阿弥陀仏になったという伝説を彫刻化した像はあまりにも有名。仏師運慶の四男である康勝の作です。頰がこけた痩身の体つき、硬い裘(かわごろも)、歩いて擦り切れた草鞋の質感がリアル。左手に持っているのは鹿角杖。

重要文化財 空也上人立像 康勝作 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵 写真 城野誠治

上人が愛でた鹿を、定盛なる猟師が射殺したと知り、大変悲しみその皮と角を請い受け、皮を裘とし、角を杖頭につけて生涯我が身から離さなかったという。定盛も自らの殺生を悔いて上人の弟子となり、寒い夜もいとわず京中を巡行して衆生の能化につとめたそうです。

重要文化財 空也上人立像(部分) 康勝作 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵 写真 城野誠治

六波羅蜜寺では正面からの拝観ですが、本展覧会では後ろ姿も拝観することができます。水晶の目から深く優しいものが伝わってきます。

重要文化財 空也上人立像 康勝作 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵 写真 城野誠治

そして平安・鎌倉彫刻の宝庫、六波羅蜜寺の名品が一堂に会します。空也上人が京都東山の地に創建した西光寺は後に六波羅蜜寺と改称され、度重なる兵火をのがれた名宝が数多く安置されています。

重要文化財 四天王立像のうち持国天立像 平安時代・10世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

空也上人の弟子である天台宗中信(ちゅうしん)が10世紀後期に造像したと伝えられる。

重要文化財 薬師如来坐像 平安時代・10世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

第2章「六波羅とゆかりの人々」では、六波羅の持つ信仰の蓄積を紹介します。

六波羅蜜寺は、平安京の東の葬送の地であった鳥辺野の入口にあり、「あの世」と「この世」の境界に位置する寺として人々の信仰を集めてきました。

六波羅蜜寺 写真 浅沼光晴

冥界への入口と考えられた六波羅蜜寺の近くには「六道の辻」と呼ばれる一画があります。人は閻魔王に生前の行いを裁かれ、次に生まれ変わる世界、六道(天・人・修羅・畜生・餓鬼・地獄)への転生が決まります。

重要文化財 閻魔王坐像 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

空也上人は、阿弥陀如来にすがれば極楽に往生することができ、また六道に生まれ変わっても、地蔵菩薩に救ってもらえると説きました。

重要文化財 地蔵菩薩立像 平安時代・11世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

運慶が1180年代に造ったと推定される鎌倉彫刻の代表的作例。X線CTの調査により像内に数多くの納入品があることが判明しています。

重要文化財 地蔵菩薩坐像 運慶作 鎌倉時代・12世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

そしてなんと!海洋堂から「空也上人立像」六波羅蜜寺公認フィギュアが3月発売決定。これは欲しい!!!

表情、手足に浮き出た血管等の肉体表現、6体の化仏、鹿角杖など細部まで精巧に再現されています。流石、海洋堂の原型製作&造形総指揮。

愛した鹿の角杖を片時も離さず市中を歩いたという…この後ろ姿に惹かれる。

森羅万象に生命を感じ、ただ南無阿弥陀仏を称え、今日ある事を喜び、歓喜躍踊しつつ念仏を唱えたという空也上人。

『捨ててこそ』という空也上人の有名な教え。一切を捨てて念仏しなさい。善悪を判断せず、地獄を恐れず、極楽も願わず念仏を唱えていると、外側のすべてが消え梵我一如(ぼんがいちにょ)の境地に至る。あるがままでいい。今が浄土になる。

浮かんだのは「中今(なかいま)」という言葉。今にフォーカスして生きるということ。悲しくても、痛くても、嫌いな自分も、瞬間瞬間の感情を「これでいい」って受け入れる。過去を後悔することなく、未来を不安に思うこともなく、今この瞬間を味わう。なかなか出来ないけど意識していくと少しづつ軽くなってきた気がします。

重要文化財 空也上人立像(部分) 康勝作 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵 写真 城野誠治

心の安寧を祈り、生涯をささげた空也上人のお姿と、六波羅蜜寺の歴史と美術を通し、困難に立ち向かい懸命に生きた当時の人々に思いを馳せる機会となる今回の展示。是非多くの方々に「にぎにぎしく」来館して頂きたいと思います。

特別展「空也上人と六波羅蜜寺

東京国立博物館・本館特別5室

2022年3月1日(火)〜5月8日(日)

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