そこにいた。特別展「ポンペイ」東京国立博物館

2022.01.13

こんにちは。2022年1月14日(金)から東京国立博物館で開催の特別展「ポンペイ」の報道内覧会に行ってまいりました。

紀元後79年、ヴェスヴィオ山の大規模な噴火により火山灰の下に埋もれたローマ帝国の都市ポンペイ。火砕流により一瞬にして埋まってしまった都市はそのまま封じ込められ、タイムカプセルともいえる遺跡は多くの人々の興味を引きつけています。

今回の展示は、ポンペイ出土の膨大な遺物を収蔵するナポリ国立考古学博物館の協力のもと、日本初公開を含む約150点が集結。

いつものように、解説など先に読まず先入観なしで乗り込みました。向こうから何が飛び込んで来るのか楽しみにして。

やはり石膏像でした。噴火物の堆積層の中にある空洞に石膏を流し込み、掘り出すと空洞の原因となったものが明らかになります。この石膏像は若い女性のもので、1875年に石膏取りされたそうです。

女性犠牲者の石膏像 石膏 ナポリ国立考古学博物館

噴火以前は単一峰であったというヴェスヴィオ山と、葡萄と穀物の守神アガトダイモンの蛇が描かれているフレスコ画。

バックス(ディオニュソス)とヴェスヴィオ山 フレスコ ナポリ国立考古学博物館

沐浴する直前のウェヌス(ヴィーナス)の姿を表現した曲線が美しい彫像。両耳のイヤリングの穴にはどんなジュエリーが輝いていたのだろう。

ビキニのウェヌス 大理石 ナポリ国立考古学博物館

ポンペイは貧富の差が激しい格差社会だったといいます。流動性が高かったとはいえ、都市の人口のかなりは奴隷だったそう。人の意識ってそう変わらない。富と権力に取り憑かれ、戦いが絶えない。でも、どんな時代でもどんな状況でも豊かな気持ちの持ち主から美しいものは生まれる。

青が美しいアンフォリスコス。

ブドウ摘みを表した小アンフォラ(通称「青の壺」)カメオ・ガラス ナポリ国立考古学博物館

スフィンクスによって支えられた卓上には、ウシのアピス、上エジプトと下エジプトの二重冠をかぶるハヤブサが両側に描かれています。アレクサンドリアの職人の作とされる杯。素晴らしい色使いと造形。

黒曜石の杯 黒曜石、サンゴ、ラピスラズリ、孔雀石、金(象嵌)ナポリ国立考古学博物館

ライオンの足が上にいくに従って葉状装飾へと変容し、獅子の頭部が現れる脚部。この3本脚のバランス…何だか怖い。残る。

ライオン形3本脚付モザイク天板テーブル 大理石、モザイク ナポリ国立考古学博物館

枠の装飾の面の表情が生き生きとしていた「哲学者たち」

哲学者たち モザイク ナポリ国立考古学博物館

ナイル川風景が一続きのフリーズ状に描かれていたという壁面から、2つの断片「ワニとカモ」が。ピンクの花と水草の中にいるワニがなんとも愛らしく描かれていた。

ワニとカモ フレスコ ナポリ国立考古学博物館

調理具や食器類のデザインも素晴らしかった。

仮面のあるパテラ ブロンズ、仔ブタ形の錘 ブロンズと鉛 ナポリ国立考古学博物館

炭化したイチジクやパンも。食品と有機遺物のコレクションが保存されているナポリ国立考古学博物館。古代ローマ時代のものとしては、世界で最も完全なものの一つだそう。

炭化したイチジク 食品 ナポリ国立考古学博物館

奥の炭化したパンとそっくりなパンを売っている様子が、フレスコ画に見てとれる。

パン屋の店先 フレスコ ナポリ国立考古学博物館

今でも充分使えそうな三日月の装飾がついているランプ。錆のついた湯沸かし器も月面着陸船のようで格好良い。

単灯ランプ ブロンズ ナポリ国立考古学博物館

湯沸かし器 ブロンズ、鉄 ナポリ国立考古学博物館

スフィンクスのテーブル脚。上腕はヒトなのに、先が獣の不気味さ。イイ。

スフィンクスのテーブル脚 ペンテリコン大理石 ナポリ国立考古学博物館

これは欲しい!なんて麗しいアクセサリー。現代より古代が劣っているとつい思いがちだけど、古代の人々は私たちが失ってしまった大切な何かを持っている気がする。

ヘビ形ブレスレット 金 ナポリ国立考古学博物館

三美神のカメオ アゲート・オニキス 、海獣と女神のカメオ カーネリアン・オニキス ナポリ国立考古学博物館

ナイル川の川岸で、コブラとマングース、カバとワニ、二羽のトキが向かい合っている。コブラとマングースの対話が聞こえてきそう。

ナイル川風景 モザイク ナポリ国立考古学博物館

イセエビとタコが戦っている周囲には、今でも沿岸域で取れるヨーロッパキダイ、ウツボ、クロダイが見て取れるのだそう。若冲の自然観察の眼を思い出す。(記事「ひと月限りの、この世の楽園」若冲展〜若冲に酔う②)

イセエビとタコの戦い モザイク ナポリ国立考古学博物館

「竪琴奏者の家」の噴水の一部を装飾していた像。生き生きとした動きと表情が印象的でした。

シカ ブロンズ、ライオン ブロンズ ナポリ国立考古学博物館
ヘビ形噴水イヌとイノシシ ブロンズ ナポリ国立考古学博物館

火砕流堆積物にはシリカゲルに似た成分が含まれたため湿気を吸収し、出土品の劣化が少なかったといいます。短時間で火砕流堆積物の下に閉じ込められた家々や美術品は、約1700年の間眠り続けていました。18世紀にようやく開始された発掘はまさに「タイムカプセル」を開封する作業。

猛犬注意 モザイクナポリ国立考古学博物館

タコを食する国でもあり、火山に特徴づけられた景観を持つイタリア。約2000年前の古代都市が蘇った特別展「ポンペイ」で、当時の人々の息吹を感じてみて下さい。

会  期2022年1月14日(金)~4月3日(日)
会  場東京国立博物館 平成館(上野公園)
開館時間9時30分~17時00分
休館日月曜日、3月22日(火)※ただし、3月21日(月・祝)、3月28日(月)は開館

※本展は事前予約(日時指定券)を推奨します。詳細は展覧会公式サイト(https://pompeii2022.jp/)をご確認ください。

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