天鵞絨(てんがじゅう)とカザフ刺繍に会いにKANNOTEXTILEのアトリエに行ってきた

2021.12.18

こんにちは。突然「天鵞絨(てんがじゅう)」という言葉が浮かんできて、KANNOTEXTILEのアトリエにお邪魔してきました。

かつて東方で天鵞絨(てんがじゅう)の布と呼ばれたヨーロッパに入る前のプリミティブなベルベット。日本においては天鵞絨と呼ばれ、遙か遠き大陸の風と共に、安土桃山時代、戦国武将の羽織などでも珍重されたシルクベルベット。

「天鵞絨」という語感は、果てしない異国に、風の音が聞こえてくる乾いた土地に連れて行ってくれる。写真のコートは2018年取材時のもの(2018.10.20「天鵞絨(てんがじゅう)の布〜KANNOTEXTILE at GRANPIE」)。

素晴らしい色合いと肌触りのベルベット!コートになったところを早くみたい。着たい。

2017年6月に神楽坂スタジオを閉鎖し、青梅に拠点を移した菅野さん。以前はアパレルに勤め、ウイリアム・モリスやエトロなどの生地見本を触る日々の中「布」が好きな自分に気付いたといいます。個人の好き嫌いに左右されない「いいもの」とは何か、「ずっと素晴らしい」と思えるものとは何か、を求め、神戸から鑑真号(中国籍のフェリー)で上海、そして西安、敦煌、西域へ布を求める旅に出ます。ウズベクに滞在し、布工房で縫製の仕事などをする傍らロシア語を習得し、アルタイ共和国に。若い頃の、バックパッカー時代とは違う「視座」で見る世界は全く異なるものだったと。

古民家を改築したアトリエにはアジアがギッシリ。

ラージャスターン州を中心に履かれている民族衣装 ” Ghagra ” をベースに作られたスカートは、インドで蒐めた木版更紗(ブロックプリント)でつくられています。動いた時の裾のボリュームが綺麗。ウエスト周りはすっきり着られるよう、少し抉ったカッティングで制作しているそうです。

美しい手織りの布

これは手織りではないですが、経年変化が素晴らしかったストール。上の毛羽立って立体感が出てるのが3年使ってるという菅野さんのもの。下が新品。セルフヴィンテージ目指して私も!ということで購入。

日本人の自分が遠い外国の布にハサミを入れて売る。それにはその背景を知り、そのものに敬意を表し、出来るだけ原型を壊さず、現代の生活に合わせて日本で着られる「服」として丁寧に仕立てたい、と。

菅野さんのコートは裏地。色合いの妙が美しい。

ペイズリー。元々インドで生まれたこの古典的図柄は、イラクではTree of Life(生命の樹)に、19世紀はじめには、スコットランド南西部の都市ペイズリーでこの図柄を取り入れた毛織物が生産され始めます。流れは東から西ね。

惹かれるのはカザフ刺繍。糸の織りなす凸凹を指でなぞると、じんわりとした温かさが伝わってきます。

モンゴル高原に住む遊牧民の移動式住居ゲル(カザフではユルトと呼ぶそう)の中に掛ける布、トゥス・キーズ。壁に結ぶ為の紐が付けられています。

kaze travel

おーキリル文字!「1971年OOさんへ」とカザフ語で刺繍されている。

キリル文字読めるようにしよう、って決心した気が。あっ、メダルが縫い付けられてるー

ウラジオストクで買ったバッジを思い出した。(2019.07.16「海軍の街 ウラジオストク③」)

この壁掛け布トゥス・キーズを使用して菅野さんがつくるコート「チャパン」。いつか欲しいと願ってきたけど今欲しい!(残念ながらコート類は現在完売で手元にないそうです)

kannotextile

コートで使用した布の残りは「壁掛け布」であったこと、その存在を忘れないよう紐を付けたままでラグに生まれ変わっていました。

そしてカザフといえば鷹狩り。両翼を広げると2mもあるイヌワシを極限の空腹状態に追い込み、腕に担ぎ山へ。山から放たれたイヌワシは狐やウサギを見つけると急降下し獲物を捕まえます。この伝統的な狩猟方法を継承し続けているのが、モンゴル西端のバヤンウルギー県に住むカザフ族。

鷹狩りに行ったこともある菅野さん。ちゃんと馬に乗れるから次回は参加させてーと本気でお願いしてきた。
Jimmy Nelsonの撮る彼らの姿に憧れる。(2021.03.07「マリアージュ フレールの紅茶「GENGIS KHAN(チンギス・カン)」からモンゴルへ」)

日本在来馬を調べていた時に出てきた蒙古野馬(モウコノウマ)。モンゴルではタヒと呼ばれるこの野生馬は1969年にわずかに1頭が見られたという幻の馬。15世紀に欧州では絶滅したと考えられ、19世紀末にロシアの軍人プルゼワルスキーがモンゴルでこの野生馬を発見(Przewalski’s Wild Horse)。欧州に輸送されたタヒの末裔たちが生き延び、最近になってモンゴルで野生に帰されたという。

サラブレッド(Thorughbred)=徹底的に(Thorough)品質改良されたもの(bred)とは異なり、胴まわりが丸くてずんぐりとした体型、粗食に耐え体質強健。カワイイ。(2021.06.26「日本在来馬と氷穴と樹海」)

最近は小さくなるのが心地良い。服をつくってる人から直接買う。野菜もしかり。有機栽培の認定を受けるのにはお金がかかるし、その分が野菜の値段に上乗せされる。認定なしでも信頼してくれてる人が買ってくれればそれでいい、というスタンスの農家からいただく。小さな共感と敬意が点となり、繋がっていくような気がする。

なーんて話をしながら鳥さんと

ピーポーくんに挨拶して

青梅駅を見て、

昭和な看板が至る所に掲げられている青梅を後にした。またねー

KANNOTEXTILEのアトリエはお店ではありません。不定期にオープンスタジオやポップアップ等開催されていますのでサイトをチェックしてみて下さい。

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