映画『DRIES:ドリス ヴァン ノッテン ファブリックと花を愛する男』試写会

投稿日:

2017.11.08

こんにちは Lulu.です。どれだけこの日を待ちわびたことか!映画『Dries(邦題:ドリス ヴァン ノッテン〜ファブリックと花を愛する男』の試写会に行ってきました。

ドリスのドキュメンタリー映画が制作される、というニュースを聞いたのは確か2016年秋。欧州で公開され〜待ちきれずにamazon UKからDVDを取り寄せようかと考えたこともあった。そんな中、2018年1月13日から日本公開決定!との情報が。

殺到する密着取材を断ってきた孤高のデザイナー、ドリス ヴァン ノッテン。25年間メンズとウィメンズコレクションを年4回発表し続けてきた。カメラは2014年9月にグラン・パレで開催された2015年春夏ウィメンズコレクションの舞台裏から、2016年秋冬メンズコレクション本番直後までの1年間に密着。

2015年春夏は、アルゼンチンのアーティストAlexandra Kehayoglouがドリスの為に特別に制作した長いフォレストカーペットが印象的なシーズンでしたね。

2016年秋冬のメンズコレクションは、ドリス念願のオペラ・ガルニエでのショーの開催が実現した記念すべきコレクション。オペラ座の圧倒的空間にふさわしく、美の密度が高い重厚なショーでした。

テイラーを営む家系の3代目として1958年にアントワープで生まれたドリス。エマニエル・ウンガロやエルメネジルド・ゼニアなどを扱うブティックを経営し、買い付けなどにドリスを同行させていたという父、亜麻布の素材を収集していたという母。徹底的に素材や生地にこだわるドリスの美意識は、こういった家庭環境から生み出されたものなのかもしれない。

ファッションと呼ばれる半年で賞味期限が切れるような虚しい「モノ」は作りたくない。情熱と愛を詰め込み、持ち主に寄り添い、一緒に成長してくれるようなもっと崇高な「何か」をつくりたい、と。だから何年経っても色褪せず、その時々の新たな視点で新鮮に纏えるのがドリス。

何ものにも影響されず自らの美意識を貫くため、そしてクリエイションの自由を守るために財政的に完全に独立。最も成功したインデペンデントブランドと称される。手軽な小物やアクセサリーなど作らず、洋服で勝負する真の服ブランド。天晴れ。

ボリュームあるスカートと、ラメの使い方が素敵だった2000年春夏。このシーズンのスカートも今なお新鮮な気持ちで纏える。

インドでは駐在員が常駐し、ドリスの要望に応えるためにフル回転する刺繍工房がある。ドリスのコレクションには消えゆく伝統工芸を保護する為、毎シーズン「刺繍」が登場する。こんな服が作りたい、と服の形から入るのではなく、ドリスが感じたことを服に込めるという発想。だから豊かな感性が凝縮された独自の生地、刺繍、プリントの制作に多くの時間を費やす。

これらはドリスの芯、だと感じる。だからどのシーズンでも私が必ず手に入れるのが刺繍とジャカード。あらゆる文化の手仕事への敬意が込められ、そこにはいつも静謐で知的な空気が流れる。

エスニックとかフォークロアと表現されるドリスのコレクションですが〜異なる要素を掛け合わせ、思いも寄らない組み合わせで驚嘆させてくれるのがドリス。そこにはどこにも存在しない「異国」が生まれる。

東欧からさらに北のイメージ、冷たく張り詰めた空気を感じた2008年秋冬。

削ぎ落としたシックな土台に、アクセサリーと靴で民俗的味付けを施し強烈な「洗練」を打ち出した2009年春夏。

インドネシアのバディックに、パールとバイカラーの靴を合わせるという素晴らしき組み合わせに狂喜乱舞した2010年春夏。

チノ素材と清朝の装飾、この上なく優雅なコレクションを披露してくれた2015年秋冬。クラシック音楽とともに育ったドリス、テーラリングとクチュールシェイプを大切に受け継いだ正統。だからどんな組み合わせでも端正。

庭園の花たちを愛でるドリスが生み出すのは繊細で豊かな色。ドリスにしか出せない色。2009年秋冬はフランシス・ベーコンにインスパイアされたシーズン。絶妙な色出しと光沢、素材の選び方が見事。強烈に時代の先端、さらにその先を走っていると感じたコレクションでした。

歴史的建造物である繊維取引所を改装したフラッグショップ「ヘット・モードパレス(Het Modepaleis)」はドリスファンの聖地。2008年春夏にアントワープで購入したブラウスは今でも大切な宝物。

コレクション初期から追い続けてきたドリス。1991年にメンズコレクション、1993年にウィメンズコレクションをパリで発表したドリス。当時は今のようにライブストリーミングでコレクションをリアルタイムで見る、なんて想像もつかなかった時代。大内順子さんによる「ファッション通信」(”This program is produced by SHISEIDO.”の声が蘇る!)や、雑誌を食い入るように眺め憧れていたものです。アイリスが語っているように〜こんなデザイナーはドリス以外にいない。謙虚で独創性と情熱、そして知性に溢れたデザイナー。彼と同時代を生き、彼の作った美しいものを纏える幸せを嚙みしめたい。

ドリスの創作活動を支える発想源のひとつが、パートナーのパトリックと暮らすアントワープ郊外の邸宅。本作ではふたりが花々に囲まれて暮らすサンクチュアリに初潜入。庭の花を活ける時、採れたばかりの野菜を調理する時、バカンスの計画を立てる時〜どんな瞬間にも全力を捧げるドリス。濃厚な時の流れから生み出される美に酔いしれたい。

『DRIES』official trailer

最後に登場するドリスの言葉 “What kind of movie is this ?”。ドリスのチャーミングな一面が垣間見れたようなこの場面、私もとても印象に残っていたので、trailerのこの構成になんだかひとりニヤケてしまいました。どんなシーンでこの言葉が発せられたのか〜お楽しみに。

He is one of the most successful independent designers in the world. ーVOGUE

『ドリス・ヴァン・ノッテン〜ファブリックと花を愛する男』

監督:ライナー・ホルツェマー(Reiner Holzemer)

出演:ドリス・ヴァン・ノッテン、アイリス・アプフェル、スージー・メンケス

2018年1月13日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館 他全国順次ロードショー

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