隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則

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2021.06.20

こんにちは Lulu.です。東京国立近代美術館で2021年6月18日〜9月26日に開催される「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則(Kuma Kengo: Five Purr-fect Points for a New Public Space)」の記者内見会へ行って参りました。

前庭にはスノーピークとコラボレートしたトレーラーハウスがお目見え。

「住箱 Jyubako 2016」

本展は、現代日本を代表する建築家のひとりである隈研吾(1954-)の大規模な個展。世界各国に点在する公共性の高い68件の建築を、時系列ではなく、5原則「孔」「粒子」「やわらかい」「斜め」「時間」に分類し、建築模型や写真やモックアップ(部分の原寸模型)により紹介。

入り口にはヘリウムガスのバルーンと、世界最軽量の布といわれるスーパーオーガンザを組み合わせた軽い茶室が。ワシントンD.C.の日本大使館で行われた茶会のためにデザインされたもので、トランクの中に詰めて日本から持ち運ぶことができたという!極限のモバイル型茶室。

「浮庵 Floating Tea House 2007」

隈氏が設計に携わった「国立競技場」のスタディ模型を展示したエリアを通り抜け、

⒈「孔 HOLE」へ。孔は街と川、里などをつなぐトンネルのような役割を果たす。

地元産の大谷石を積み上げてデザインされた駅前広場。重く閉鎖的になりがちな石の建築を、大谷石と鉄板を組み合わせたポーラス(多孔質)なディテールで風通しの良い開かれたものへと変身させた。

「ちょっ蔵広場 Chokkura Plaza 2006 栃木県塩谷郡高根沢町集会場」

雪深い飯山では昔から雁木と呼ばれる屋根付きのアーケード空間を中心として街が構成されていたそう。この雁木に着想を得て、室内化された路地状の室内空間によって2つのホールと交流施設を繋いだ「飯山市文化交流館 なちゅら Iiyama Cultural Hall “Nachura” 2015」。

農家の半屋外の作業空間である土間に着想を得た屋根付き広場(ナカドマ)を中心とする交流型の市役所。地元産の木材、紙、絹織物を多用したやさしい空間が出現。

「アオーレ長岡 Nagaoka City Hall Aore 2012」

⒉「粒子 PARTICLES」へ。建築を小さな単位=粒子の集合体として捉えることで、建築とその中におかれる様々なモノと同じレベルで考えることができるようになる、つまり人に優しい建築ができるという隈氏の考察。

台湾でも香港でも東京でも、見かけると買ってしまうサニーヒルズのパイナップルケーキ。青山のサニーヒルズの旗艦店には、日本の木の匠が伝えてきた「地獄組み」という強度の高いジョイントシステムが応用されています。小さな粒子を織って作る日本の伝統木造の方法を現代化したそう。そして60mm x 60mmという木材の断面寸法がパイナップルケーキのそれと響き合うという素晴らしい設計。

「サニーヒルズジャパン Sunny Hills Japan 2013」

地元の集成材工場で製作可能な梁セイ30cmの杉の中型断面の集成材を組み合わせることで、峡谷の景観にマッチする粒子が集合したような木橋ができあがった。

「梼原 木橋ミュージアム Yusuhara Wooden Bridge Museum 2010」

⒊「やわらかい SOFTNESS」。日本の伝統的な建築にみられる水で溶いた土を塗った壁のように、やわらかい素材を使って建築をつくることも可能。そのやわらかさは人にやさしい環境的なものへと近づける役割を果たす。

鴨長明自身が、家を持ち歩いて都をさまよっていたという故事がヒントとなって作られた「800年後の方丈庵」は、細い木材、超強力磁石、ETFEという透明な膜の組み合わせで筵(むしろ)のように丸めて持ち運べる超軽量移動式住宅。

「800年後の方丈庵 Hojo-an after 800 Years 2012」

北陸に伝わる「組み紐」の技術で、曲げることができなかったカーボンファイバーに柔軟性を与えることが可能となり、それらを用いて耐震補強を施したしなやかな展示場「小松マテーレ」。

「小松マテーレ ファブリック・ラボラトリー fa-bo  KOMATSU MATERE Fabric Laboratory fa-bo 2015」

大気汚染物質を吸着する機能を持つ布Breathを用いて作られたインスタレーション。プリーツ加工を施すことにより表面積を増大させ、吸着機能も増大。これひとつで、揮発性有機化合物(VOCs)を、1年間で乗用車9万台分吸着することができるという。

「Breath / ng 2018」

⒋「斜め OBLIQUE」。人を迎え、守る印象を与える傾斜を持つ屋根。壁も床も斜めなら、より人に優しく自由度が増す建築に。

アルミ・ガラス・石という富山を代表する素材が角度をつけてランダムに配置され、立山連峰の硬質な山肌と建築のファザードが響き合う「TOYAMA キラリ」。

「TOYAMA キラリ TOYAMA Kirari 2015」

⒌「時間 TIME」。「物を弱くすることで、公共空間が楽しくなり、公共空間が人間のものになる」と隈氏。

和の巨匠、村野藤吾の代表作である新歌舞伎座をホテルとして再生。村野氏の連続唐破風デザインと上層部のアルミの繊細な粒子とが相まった優美な建築。美しい違和感。ルーブルのガラスのピラミッドを思い出した。

「ホテルロイヤルクラシック大阪 Hotel Royal Classic Osaka 2020」

氏の建築を語る言葉なんて持ち合わせていませんが…感じたことは、風通しが良く、すべての境界が曖昧なこと。それはとても心地良い。

「雲の上の図書館 / YURURI ゆすはら Yusuhara Community Library / YURURI Yusuhara 2018」

その土地に息づく文化、自然に敬意を払い、土地の空気を抱え込み大胆に昇華する。地元の素材や技術を使い、その土地にあるもので循環させていく。建築のメティエダール 。真の「持続可能」。

人も土地も自然も全部巻き込んで、渦巻きながら螺旋状に伸びていく。そんなエネルギーを感じました。

「浜田醤油 Hamada Shoyu 2019」

丹下健三の国立屋内総合競技場に衝撃を受け、幼少期より建築家を志したという隈研吾。丹下氏は東京湾に海上都市をつくるという「東京計画1960」というアイディアを1961年に発表しています。今回隈研吾は、その俯瞰した視点と対照的な「東京計画2020 ネコちゃん建築の5656原則」を発表。それは都市へと向かう視点、地面に近いネコの視点。

「コロナ渦は、ハコが人間を少しも幸福にしないということを教えてくれた。(中略)僕自身緊急事態宣言の中で、ハコを出て、歩き始めた。歩いてみると、街がまったく違うものに見えてきたのである。ハコの外に、こんなにも大きな可能性があり、多くのコト(情報)があることに、今まで気がつかなかった。

世界はすでに、ハコに覆われていて、このハコをぶち壊すなど、とてもできそうになく思える。しかし、半ノラ(神楽坂のカフェにいた半野良の猫)は、わずかの隙間を頼りにし、そこを自分たちのベースとすることで、そんなハコ世界の解体を試みているのである。

ハコは、すぐに壊せるわけではない。そしてハコを即、壊す必要もないのである。ハコの隙間を生きる半ノラの方法こそ、僕らは学ぶべきである。」

「公共性やパブリックスペースをテーマとし、建築物や「ハコ」ではなく建築と建物の間の隙間にフォーカスしたいというお題が与えられた。それはいままでの展覧会と違うことができそうだと思い、パブリックや隙間について考えはじめたら、コロナがやってきた。コロナを体験した今、われわれ全員がハコから逃げ始めて、ハコの外のパブリックスペースを再定義しようとしている。

タイムリーで予言的なテーマを与えてもらい、深く感謝している。」 隈研吾

今まで当たり前だと何も疑問を持たずにきたこと、これが自由だと思い込んでたこと。視点を変えてみると鳥かごの扉が開いていることに気付く。変化ってワクワクするね。

美術館を出たら、お堀の緑が綺麗でした。

隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則

会場: 東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー

会期: 2021年6月18日(金)~9月26日(日)

休館日: 月曜日[ただし7月26日、8月2日、9日、30日、9月20日は開館]、8月10日(火)、9月21日(火)

開館時間: 10:00-17:00(金・土曜は10:00-21:00)

*入館は閉館30分前まで【6月18日(金)、19日(土)は開館時間 10:00~20:00(*最終入場19:30まで)となります】

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